gezellig

日記など。

It's been ages

昔の恋人に会った。

 

「昔の恋人」なんていうには、僕らは当時若すぎて、だからなんだかむず痒い気持ちがしたのだけれど、4年ぶりの再会。そして、まともに言葉を交わすのは、6年ぶりとか、そんなところだった。

 

僕は彼女が、どんな大学生活を送ってきたのか知らない。今どんなふうに働いているのかも知らない。久しぶりすぎて、緊張した。何を話したらいいのかもわからなかった。こんなふうに話していたっけ。彼女は変わってしまっていないだろうか。自分は変わってしまっていないだろうか。

 

ぎこちない乾杯で夜が始まった。途中、僕らは、何度も何度も話題につまって、仕方なくお酒を口に運んだ。目の前を見ると、同じように困った表情の彼女がいた。お互いの目を見つめて、笑った。

 

あの頃、高校生だった僕らは、当然お酒なんて飲めなかったし、お金も全然なくて、そんなにおいしいものを食べたこともなかった。でも、目の前にはおいしい料理と、おいしいお酒が並んでいて、それがなんだか照れくさくて、笑った。何年も話していなかったのに、昔みたいに、でもそれはちょっと昔とは違うけれど、言葉を交わせるのがなんだか可笑しくて、笑った。

 

別々の人生を歩んでいた数年間をすべて語りつくすことなんて到底できなくて、その夜の会話はひどくアンバランスなものになっていた気がするけれど、それでもよくて、食べて、語って、笑って。きっとまた会える。これからも、たまに会って、笑い合える。友達になれる。そうしたら、またいろいろな話をすることができるし、これからもいろいろな話をしていくことができる。

 

お互いが、これからも、日々幸せな人生を歩んでいけるように。仕事も恋愛も、うまくいくように。妬みとか、後ろめたさとか、そういう感情を一切抜きにして、純粋に彼女の幸せを祈ることができると思った。

 

僕はちょっと太ったし、スーツを身にまとっていた。僕らは、様々なものごとに現実的になってしまった。仕事とか、お金とか、結婚、とか。ひょろひょろした体に学生服を着ていたあのころとはいろいろなことが変わってしまっていたけれど、それでも、変わらない笑顔がそこにはあった。僕がちょっとした夢を話したら、いいね、って言ってくれた。なんだか、少し、うれしくて泣きそうになった。

 

safe.

 

そんな英単語が頭に浮かんだ。穏やかで、すっと心が落ち着く、そんな夜。

 

There's a place off Ocean Avenue

Where I used to sit and talk with you

We were both 16 and it felt so right

(Yellowcard - Ocean Avenue)

 

 

そう、僕らはあの海辺の街で、16だった。今ではお互いに、東京で25になろうとしていて、お互いに10代のうちから付き合っている恋人がいる。そんな、必然かもしれない偶然。

 

夜は更けて、お腹いっぱいでほろ酔い気分の僕たち。東京の街で、ワインを飲み交わす未来なんて、昔は全然想像できなかったけれど、でもそれはあくまで夢ではなく現実だった。また会おうと別れの言葉を交わして、僕は銀座線に乗り込んだ。再会から始まる恋、なんてドラマチックな展開はなく、お互いそうする気もなくて、お互いがそうする気があるとも思ってなくて。シンプルで潔い信頼関係。

 

大人になるって、きっとこういうこと。

 

人生は、たくさんのさよならと、たくさんのお久しぶりです、で溢れている。