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日記など。

春と雨と

あたたかい雨が東京の街をしっとりと濡らし、満開に近づいた桜の花は淡いピンク色で街を彩っていた。分厚い雲に覆われた灰色の空には、儚い桃色は少し頼りなく感じられたけれど、春がやってきたのだということを強く感じた。

 

 

It's been a roller coaster ride.

 

 

そんな英語の表現がある。ローラーコースター・ライド。最近はまたしても目まぐるしく移り変わり続ける日々を過ごし、休む暇なんてないくらいだ。仕事が忙しいというだけではなく、休日も毎週どこかしらに出かけているので、ああこれが充実した日々というやつか、でもやっぱりちょっと疲れるな、どこかでちょっと休みたいな、なんて思ったりしている。

 

 

この週末は仙台に友達に会いに行ってきた。一日と半日だけの滞在だったけれど、おいしいものをおなか一杯に食べて、見たことのない風景をたくさん見た。週末に、ちょっとそこまでって感じで、仙台まで新幹線で出かけることができるって、なんだか自分がまた一段と大人になったような気持ちになった。

 

 

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今年はいろいろなところに行きたい。お金は少しかかるかもしれないけれど、でも大丈夫。ちょっとくらい貯金が減ったところで死にやしない。そんなことを考えながら、日々を過ごしている。でもやっぱりちょっと怖いから、コンビニじゃなくてなるべくスーパーに行くようにしてたり。あんまり意味ないんだけどね。昔っから、自炊するとたくさん食べてしまうし、ついついちょっと高い食材を使って手の込んだ料理をしてしまうし。

 

 

見たことのない世界を、仕事に本気で打ち込みながら、休日の時間をつかってどれだけ見ることができるか。それが今年のテーマになる気がしている。たぶん、ちょっとお金を使えばいろいろなところにいける。なんなら、週末に海外にだって行ける。ゴールデンウィークは久しぶりのヨーロッパだ。日本にも行ったことのないところがたくさんある。四国に行ってみようかな?北海道に、子供のときぶりに行ってみようかな?

 

 

そうやって、満足のいく一年が過ごせるだろうか。もし、満足できるのであれば、程度の差はあれ今年一年が今後の自分の生き方のモデルになるかもしれない。もし、それでも一年が終わって、本当に、もっともっと知らないところを自分の足で歩いてみたい、何も知らない環境の中で生きてみたいって思うのであれば、そのときはそのとき。次のプランを考えればいい。

 

 

 

「ちょっとでも見たいと思ったものは我慢せず見よう」

 

 

そう考えている僕は、仙台二日目の観光を昼過ぎで切り上げて、友人に別れを告げ、東京行きの新幹線に乗った。まだ間に合う、東京についても日が暮れる時間じゃない。桜を見よう。どうやら東京は雨が降っているみたいだけど。

 

 

 

「あいにくの雨」という言い回しがある。たしかに、雨は残念だ。きっと、青空が見えていたら、目黒川沿いの桜も、もっときれいに見えたのかもしれない。でも、そこには確かに春があった。季節が巡っていた。いつの間にか、どうしようもなく。

 

 

奇妙なことに、大学を卒業してから3年が経っていた。生まれ育った街を離れて東京で暮らし始めてから、7年が経っていた。7年前の今頃は、ほんとうに何もかもが新しくて、とても、とても、ワクワクしていたことを覚えている。暖かな東京の春の日差しを浴びて、慣れない家事をせっせとこなし、ちょっとずつ自分なりの暮らしを組み立てていった。「東京」なんて言葉を使うのが憚られるような片田舎だったし、レオパレスのアパートは周りにスーパーもコンビニもない不便な場所にあったし、線路沿いで電車が通るたびにガタガタ揺れたけれど、それでも僕はあの部屋が大好きだった。「戻れるものなら戻りたい」、とは思わない。でも、できるのであれば、あの頃の自分のところへ行って、そっと、「君はきっと、今、とても幸せな時間を過ごしているんだ」と囁いてみたい。それでいいんだよって。水をすぐに吸収する乾いたスポンジみたいに柔らかで、なにかを吸い取ってやろうという意思と、自分ならやれるはずという大胆不敵な自信に満ち溢れていたあの頃の自分。そんな感覚、なかなか掴めるものではないから。

 

 

 

それからの僕は、春の迎え方が下手だったな、と思う。何かに追われすぎていたり、春を待ちわびる人が疎ましく思えたり、日本にいなかったり。でも、今年は春が楽しい。それも、自分の成長ということなのかもしれないし、大人になったということなのかもしれないし。いろいろなことを嫌いなままでは、生きていくのが大変だしな、と思うようになったし。

 

 

楽しく生きよう、一瞬一瞬を大切に生きよう、と思った週末だった。

 

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曇り空と、桜と、やたらと高いホームから出発する電車。自分の暮らす街。愛おしい風景。多くの人が中目黒に桜を見に行くけれど、大崎から五反田にかけての目黒川に沿った道は、人も少なく平和で、なんだか少し胸がいっぱいになるほど美しかった。