gezellig

日記など。

冷えた街

夜遅くに起こった厄介ごとのせいで、日が昇る前に起きて震えながら裸になってシャワーを浴びる。冬なんてたいして汗もかかないんだし、肌も乾燥するから、朝のシャワーを浴びる必要はあまりないのだけれど、なんとなく習慣で、毎日シャワーを浴びている。熱いお湯で強制的に目を覚まし身体を洗い髭を剃り、洗面所で髪を乾かし、髪型を整え、少しだけ香水をつけてからスーツを身に纏う。外に出ると刺すような冷気だ。曇った空は少しずつ明るくなるけれど、それは厚い雲の存在を際立たせるだけで、青空は一向に見えてこない。ふと、軽く肌に触れるものがある。粉雪が舞っていた。まるで、上空の寒さに耐えられなくなったから、地上に逃げ出してきたみたいだな、と思う。小さくて、ごく軽い雪の粒が、路上に落ちて消える。東京に暮らしていても、こんな日もある。

 

 

嘘をつくことがうまくなってしまって、日常をやりすごすことに慣れてしまって、やってはいけないことを繰り返すことに慣れてしまって、これでいいのかと思いながら一日、また一日と、心の中に黒い染みが増えていく。もう少し頑張れば、救いはあるだろうか。どこまで走り続ければほんとうにほしいものが手に入るだろうか。ちょっと疲れたから休もうかと考える余裕もなくて、ふと振り返ると今日は昨日とまるで違う一日で、僕は一時間前のことすらうまく思い出せないで立ち尽くす。

 

 

気が付いたら肯定してほしいだとか、認めてほしいだとか、そんなちっぽけなことばかり考えている。勝手に傷ついて、相手のことなんて考えないで、自分の殻に閉じこもる。そんな生き方はもうやめようと思って、ちょっとだけうまくできたかなと思ったけれど、自分の本質はそんなに簡単に変えられるものではない。だからこそ人を認められる人でありたい。肯定できる人でありたい。でもそれがうまくできずに日々、悶々としている。

 

 

 

怪獣の腕のなか

笑っちゃうくらいに抱きしめるから

誰かを拒むための鎧など

重たいだけだから捨てましょう

 

―きのこ帝国『怪獣の腕のなか』

 

 

 

ここ最近の東京は冷え込みが厳しくて凍えるようだ。暖かい季節というのは、どんなものだったっけ。人はその状況から遠く離れたときにうまく記憶を呼び寄せることができない生物だ。いつだって思い出すのは、その瞬間がやってきたとき。ああ、昔、こんな冬もあったなと、思い出す。